目次
格助詞とは
助詞は、その代表的なものに「てにをは」があり、その機能は、他の語との関係を示したり、語に一定の意味を添えたりします。
格助詞は、助詞の種類のひとつであり、その助詞の付いた語が、文中でどういう資格になるかを示す働きがあります。
古文の格助詞の代表的なものには、「が・の・を・に・へ・と・より・から・にて・して」があります。
今回は、格助詞の「が」「の」について解説します。
格助詞の接続
格助詞は、体言や活用語(動詞や助動詞、形容詞、形容動詞)の連体形に接続します。
次に、格助詞「が」「の」の用法を学びましょう。
格助詞「が」「の」の用法
格助詞「が」「の」には、『主格』『連体修飾格』『同格』『体言の代用』の用法があります。
さらに、格助詞「の」には『比喩(連用修飾格)』の用法があります。
格助詞「が」の用法
格助詞「が」には、『主格』『連体修飾格』『同格』『体言の代用』の4つの用法があります。
格助詞「が」の『主格』用法
主格とは、格助詞の付いた語が主語になることを示します。
現代語訳はそのまま「~が」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 雀(すずめ)の子を、犬君(いぬき)が逃がしつる 〔源氏物語〕
(現代語訳:雀の子を、犬君(=召使の童女の名)が逃がしてしまったの)
格助詞「が」の『連体修飾格』用法
連体修飾格とは、体言(名詞)に連なり、体言を修飾(説明)することを示します。(体言に連なりとは、すぐうしろに体言がつながるという意味です。)
現代語訳は「~の」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ なでしこが花とり持ちてうつらうつら見まくの欲しき君にもあるかも 〔万葉集〕
(現代語訳:なでしこの花を手にとってはっきりと見たいように、よくよく会いたいあなたでもあるなあ)
例文では、「なでしこの」が「花」を修飾(説明)している。
格助詞「が」の『同格』用法
同格とは、一つの体言(名詞)を修飾(説明)する語句を二つに分けて同じ資格を与えることを示します。
現代語訳は「~であって」「~で」となります。訳を行う際は、格助詞「が」の前にある体言を「が」の後にくる連体形の語のあとに補って訳す必要があります。
例文で確認してみましょう。
⑴ いとやむごとなき際にはあらぬが、優れて時めきたまふありけり 〔源氏物語〕
(現代語訳:それほど高貴な身分ではない方であって、非常に帝からのご寵愛を受けていらっしゃる方があった)
「いとやむごとなき際にはあらぬ」⇒「方」と「優れて時めきたまふ」⇒「方」というように2つの修飾要素が同格の「が」によってつながれています。
格助詞「が」の『体言の代用』用法
体言の代用とは、「もの」や「こと」という形式的な体言(名詞)の代わりに用いられることを示します。
現代語訳は「~のもの」「~のこと」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ この歌は、ある人のいはく、柿本人麻呂がなりと、 〔古今和歌集〕
(現代語訳:この歌は、ある人が言うには、柿本人麻呂のものであると、)
格助詞「の」の用法
格助詞「の」には、『主格』『連体修飾格』『同格』『体言の代用』『比喩(連用修飾格)』の5つの用法があります。
格助詞「の」の『主格』用法
主格とは、格助詞の付いた語が主語になることを示します。
現代語訳は「~が」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 雪のおもしろう降りたりし朝 〔徒然草〕
(現代語訳:雪が趣深く降っていた朝)
格助詞「の」の『連体修飾格』用法
連体修飾格とは、体言(名詞)に連なり、体言を修飾(説明)することを示します。(体言に連なりとは、すぐうしろに体言がつながるという意味です。)
現代語訳はそのまま「~の」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ いかなる人の御馬ぞ 〔徒然草〕
(現代語訳:どういう人の御馬か)
格助詞「の」の『同格』用法
同格とは、一つの体言(名詞)を修飾(説明)する語句を二つに分けて同じ資格を与えることを示します。
現代語訳は「~であって」「~で」となります。訳を行う際は、格助詞「の」の前にある体言を「の」の後にくる連体形の語のあとに補って訳す必要があります。
例文で確認してみましょう。
⑴ いと清(きよ)げなる僧の、黄なる地(ぢ)の袈裟(けさ)着たるが来て 〔更級日記〕
(現代語訳:たいそう美しい感じの僧で、黄色い地の袈裟を着ている僧が来て)
「いと清(きよ)げなる」⇒「僧」と「黄なる地(ぢ)の袈裟(けさ)着たる」⇒「僧」というように2つの修飾要素が同格の「の」によってつながれています。
格助詞「の」の『体言の代用』用法
体言の代用とは、「もの」や「こと」という形式的な体言(名詞)の代わりに用いられることを示します。
現代語訳は「~のもの」「~のこと」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 草の花はなでしこ 唐(から)のはさらなり 〔枕草子〕
(現代語訳:草の花はなでしこ(がよい) 中国のものは言うまでもない(ほどすばらしい))
格助詞「の」の『比喩(連用修飾格)』用法
比喩とは、何かを他の何かに置き換えて表現することです。
連用修飾格とは、用言(動詞、形容詞、形容動詞)に連なり、用言を修飾(説明)することを示します。(用言に連なりとは、すぐうしろに用言がつながるという意味です。)
現代語訳は「~のように」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 日暮るるほど、例の集まりぬ 〔竹取物語〕
(現代語訳:日が暮れる頃に、いつものように集まった)
まとめ
今回学んだことをまとめます。
・格助詞「が」の4つの用法は『主格』『連体修飾格』『同格』『体言の代用』である。
・『主格』 現代語訳:~が
・『連体修飾格』 現代語訳:~の
・『同格』 現代語訳:~であって、~で
・『体言の代用』 現代語訳:~のもの、~のこと
・格助詞「の」の5つの用法は『主格』『連体修飾格』『同格』『体言の代用』『比喩(連用修飾格)』である。
・『主格』 現代語訳:~が
・『連体修飾格』 現代語訳:~の
・『同格』 現代語訳:~であって、~で
・『体言の代用』 現代語訳:~のもの、~のこと
・『連用修飾格』 現代語訳:~のように