置き字とは

漢文の置き字について説明します。

漢文を中国語で読むときにはすべての字を読んでいきますが、漢文を訓読(日本語を用いて訳読)する場合に読まない字があります。この読まない字は置き字と呼ばれます。

置き字は、訓読の際に読まない字ですが、文法的な機能を持っています。

文中で、語句と語句の関係を示したり、文末に置いて断定・完了・疑問などの意味を示したりする字のことを助字といいます。

この助字のうち、「也(なり)」や「邪(や・か)」などは訓読の際に読まれますが、一方で『而』『於』『于』などのような助字は、その字の文法的機能が助字の前後に置かれる字に付ける送り仮名によって示されるため、読みの対象から外される場合がほとんどです。

つまり、置き字とは、語句と語句の関係を示したり、断定・完了などの文法的な機能を持つが、訓読(日本語を用いて訳読)の場合にその文法的機能を送り仮名によって示し、その結果として読みの対象から外れる字のことをいいます。

漢文の置き字には主に、『而』『於』『于』『乎』『矣』『焉』『兮』があります。

それぞれの語について詳しく説明していきます。

置き字(接続詞)『而(ジ)』

置き字(接続詞)『而』

『而』の文法的機能は、語句と語句の接続です。接続には順接と逆接があります。

順接は、ある条件に対して予想される結果が現れる(ある条件と予想される結果が接続する)ことを示します。

『而』が順接の接続詞となる場合は、『而』の直前の語に送り仮名の「テ・シテ」を付けます。

逆接は、ある条件に対して予想される結果が現れない(ある条件と予想されない結果が接続する)ことを示します。

『而』が逆接の接続詞となる場合は、『而』の直前の語に送り仮名の「ドモ」を付けます。

例文を確認してみましょう。

例文 『而』

⑴ 学び時に之を習ふ、亦(また)説(よろこ)ばしからずや (現代語訳:学問をし、そして時に応じて復習するのは、なんと喜ばしいことではないか)

⑵ 子(こ)養(やしな)はんと欲すれども親待たず (現代語訳:子供が(親を)養おうとしても、親は(死んでしまって)待ってはくれない)

置き字(前置詞)『於(ヲ)』『于(ウ)』『乎(コ)』

置き字(前置詞)『於』『于』『乎』

『於』『于』『乎』は文法的機能として、場所・対象・比較・受身(の動作主)を表すのに使われ、これらの語の前に置く前置詞として働きます。

『於』『于』『乎』が場所・対象・受身の前置詞となる場合は、『於』『于』『乎』の後に続いて場所・対象・受身の動作主を表す語の後に送り仮名の「ニ」を付けます。

『於』『于』『乎』が比較の前置詞となる場合は、『於』『于』『乎』の後に続いて比較対象を表す語の後に送り仮名の「ヨリ(モ)」を付けます。

例文を確認してみましょう。

例文 『於』『于』『乎』

⑴ 荘子(さうし)濮水(ぼくすい)釣る (現代語訳:荘子が濮水で釣りをしていた)

⑵ 吾十(じふ)有(いふ)五(ご)にして学志す (現代語訳:私は十五歳になって学問志した)

⑶ 人生よりも貴(たつと)きものは莫(な)し (現代語訳:人にとって生命よりも大切なものはない)

⑷ 節(せつ)倹(けん)力(りょく)行(かう)を以て斉(せい)重んぜらる (現代語訳:倹約し、力を尽くして励むことによって斉の国重く用いられた)

置き字『矣(イ)』

置き字『矣』

『矣』は文法的機能として、断定・完了・意志などの語気を表すのに使わる。『矣』は文末に置かれ、直前の語に対してこれら(断定・完了・意志など)の意味を加える。

『矣』が断定の語気を表す場合は、断定の意味が加わる『矣』の直前の語に送り仮名の「ナリ(=断定の助動詞)」を付けます。

『矣』が完了の語気を表す場合は、完了の意味が加わる『矣』の直前の語に送り仮名の「リ(=完了の助動詞)」を付けます。

『矣』が意志の語気を表す場合は、意志の意味が加わる『矣』の直前の語に送り仮名の「ン(=意志の助動詞)」を付けます。

例文を確認してみましょう。

例文 『矣』

⑴ 朝(あした)に道を聞かば、夕(ゆふ)べに死すとも可なり (現代語訳:朝に(真実の)道を聞くならば、その夕方に死んでもかまわないのだ)

⑵ 舟は已(すで)に行(ゆ)け。而も剣は行(ゆ)かず (現代語訳:舟は進んでしまっ。しかし(沈んだ)剣は進んでいない)

⑶ 千万人(せんまんにん)と雖(いへど)も、吾往(ゆ)か (現代語訳:たとえ(敵が)千人万人であったとしても、私は行こ)

置き字『焉(エン)』

置き字『焉』

『焉』は文法的機能として、断定・完了・などの語気を表すのに使わる。『焉』は文末に置かれ、直前の語に対してこれら(断定・完了など)の意味を加える。

『焉』が断定の語気を表す場合は、断定の意味が加わる『焉』の直前の語に送り仮名の「ナリ(=断定の助動詞)」を付けます。

『焉』が完了の語気を表す場合は、完了の意味が加わる『焉』の直前の語に送り仮名の「リ(=完了の助動詞)」を付けます。

例文を確認してみましょう。

例文 『焉』

⑴ 蓋(けだ)し一歳の死を犯(をか)す者(こと)二(ふた)たびなり (現代語訳:考えてみれば、一年のうちで死の危険をおかすのは二度目である)

⑵ 聞く者皆感嘆(かんたん)せ (現代語訳:話を聞いた者は皆感嘆し)

置き字『兮(ケイ)』

置き字『兮』

『兮』は韻文(韻を踏んだ文)の句中や句末に置かれ、ただ単に詩のリズムを整える為の語であり、文法的な機能はありません。

『兮』は漢文を中国語で読むときにリズムを整える音として読まれますが、文法的な機能は持たないため漢文を訓読(日本語を用いて訳読)する際は、無視されます。

例文を確認してみましょう。

例文 『兮』

⑴ 力は山を抜き気は世を蓋(おほ)ふ (現代語訳:力は山をも引き抜き、気力は天下をも覆いつつむ)

最後に

今回は、漢文の置き字『而・於・于・乎・矣・焉・兮』について解説しました。

合わせて読みたい




【スタディサプリ(広告)】スタディサプリなら、いつでもどこでも全国トップクラスの講師陣の分かりやすい解説で勉強することができます。5教科18科目、4万本を超える授業動画がPC、スマホで見放題。リンクはコチラ→受験生の2人に1人が利用する圧倒的なわかりやすさ!まずは無料でお試し。

 


【進研ゼミ(広告)】進研ゼミ高校講座ではテキストと連動したスマホ学習で無理なく勉強ができます。リンクはコチラ→進研ゼミ高校講座

おすすめの記事