漢文の仮定の表現について説明します。

仮定形とは

仮定とは、「もし~ならば」など実際にそうではないこと、まだそうなっていないことを仮に想定して言うことです。

仮定形には、順接仮定条件逆接仮定条件というものがあります。

順接仮定条件とは、仮に想定した条件に対して、予想される結果が導かれる場合を言います。

逆接仮定条件とは、仮に想定した条件に対して、予想される結果が現れないことを言います。

訓読の際に、順接仮定条件の場合には、条件の部分の文末に接続助詞の「バ」を置き、逆接仮定条件の場合には、条件の部分の文末に接続助詞の「ドモ」を置きます。

仮定を表す副詞を使う場合

仮定を表す副詞には「若」「如」「苟」「縦」などがあります。

副詞『若』『如』を使う形

仮定を表す副詞『若』『如』

『若』『如』は、順接仮定条件を表す場合と逆接仮定条件を表す場合の2パターンがあります。

・読み方は「もシ~バ(順接仮定条件)」「もシ~トモ(逆接仮定条件)」

・訳し方は「もし~ならば(順接仮定条件)」「たとえ~としても(逆接仮定条件)」

となります。

※『若』『如』の他に「誠」「設」「即」「仮」なども使われます。

例文を確認してみましょう。

例文 『若(如)』(順接仮定条件)

⑴ 若(も)し薬瞑眩(めんげん)せずん、厥(そ)の疾(やまひ)瘳(い)えず (現代語訳:もし薬によって目まいがするほどでないならば、その病気はなおらない)

⑵ 臣如(も)し虚を搗(つ)か、勢(いきほ)ひ必ず利を得ん (現代語訳:私がもし(敵の)弱点を攻撃するならば、(その)勢いは必ず勝利を得るであろう)

例文 『若(如)』(逆接仮定条件)

⑴ 即(も)し敗死(はいし)すとも、一老翁(いちらうをう)を喪(うしな)ふのみ (現代語訳:たとえ敗れて死んだとしても、一人の老人を失うだけだ)

副詞『苟』を使う形

仮定を表す副詞『苟』

『若』『如』は、順接仮定条件を表す場合と逆接仮定条件を表す場合の2パターンがあります。

・読み方は「いやしクモ~バ(順接仮定条件)」「いやしクモ~トモ(逆接仮定条件)」

・訳し方は「もし~ならば(順接仮定条件)」「たとえ~としても(逆接仮定条件)」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『苟』(順接仮定条件)

⑴ 苟(いやし)くも恒心無けれ、放辟邪侈、為さざること無きのみ (現代語訳:もし一定不変の良心がなけれ、わがまま勝手な悪いことをどんなことでも平気でしてしまうものだ)

例文 『苟』(逆接仮定条件)

⑴ 苟(いやし)くも富貴(ふうき)となるとも、相(あひ)忘るること無からん (現代語訳:たとえ富貴の身になったとしても、(あなたを)忘れることはないだろう)

副詞『縦』を使う形

仮定を表す副詞『縦』

『縦』は、逆接仮定条件を表します。

・読み方は「たとヒ~トモ」

・訳し方は「たとえ~としても」

となります。

※『縦』の他に「縦令」「仮令」「仮如」なども使われます。

例文を確認してみましょう。

例文 『縦』(逆接仮定条件)

⑴ 縦(たと)ひ彼言はずとも、籍独り心に愧(は)ぢざらんや (現代語訳:もし彼らが何も言わなかったとしても、私はどうして内心恥ずかしく思わないだろうか、いや恥ずかしい)

仮定を表す接続詞を使う場合

仮定を表す接続詞には「則」「雖」などがあります。

接続詞『則』を使う形

仮定を表す接続詞『則』

『則』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~バすなはチ…」

・訳し方は「~ならば…(である)」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『則』(順接仮定条件)

⑴ 学びて思はざれば則(すなは)ち罔(くら)し (現代語訳:学んでも思索しないならば道理がわからない)

⑵ 思ひて学ばざれば則(すなは)ち殆(あやふ)し (現代語訳:思索しても学ばないならば(独断に陥り)危険だ)

接続詞『雖』を使う形

仮定を表す接続詞『雖』

『雖』は、逆接仮定条件を表します。

・読み方は「~トいへどモ」

・訳し方は「たとえ~としても」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『雖』(逆接仮定条件)

⑴ 千万人と雖(いへど)も、吾往かん (現代語訳:たとえ(相手が)千万人であるとしても、私は行こう)

否定語を重ねて仮定を表す

否定語を重ねることで、仮定を表すことができます。

この場合、一つめの否定語が表す部分(前半部分)が仮定条件となり、二つめの否定語が表す部分(後半部分)が仮定から導かれる結果を表します。

否定語を重ねる形『不~不…』

仮定の表現『不~不…』

『不~不…』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~(セ)ずンバ、…(セ)ず」(「ず」は『打消』の助動詞)

・訳し方は「~しなければ…しない」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『不~不…』(順接仮定条件)

⑴ 憤せずんば、啓せず (現代語訳:(意欲が)吹き出さなければ、開き導くことはしない)

⑵ 虎穴(こけつ)に入らずんば、虎子(こし)を得 (現代語訳:虎の穴に入らなければ、虎の子を手に入れることはできない)

否定語を重ねる形『非~不…』

仮定の表現『非~不…』

『非~不…』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~ニあらザレバ、…(セ)ず」(「ず」は『打消』の助動詞)

・訳し方は「~でなければ…しない」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『非~不…』(順接仮定条件)

⑴ 梧桐に非ざれば止まら、練実に非ざれば食らは (現代語訳:青桐の木でなければ止まら、竹の実でなければ食べない)

⑵ 其の君に非ざれば、事(つか)へ (現代語訳:その君主でないならば、仕えない)

否定語を重ねる形『無~不…』

仮定の表現『無~不…』

『無~不…』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~なクンバ、…(セ)ず」(「ず」は『打消』の助動詞)

・訳し方は「~がなければ…しない」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『無~不…』(順接仮定条件)

⑴ 民信無くんば立た (現代語訳:民衆に信義の心がないならば、(政治は)成り立たない)

否定語を重ねる形『不~無…』

仮定の表現『不~無…』

『不~無…』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~(セ)ずンバ、…なシ」(「ず」は『打消』の助動詞)

・訳し方は「~しないならば…はない」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『不~無…』(順接仮定条件)

⑴ 詩を学ばずんば、以て言ふこと無し (現代語訳:詩を学ばないならば、言うことはできない)

否定語を重ねる形『非~無…』

仮定の表現『非~無…』

『非~無…』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~ニあらザレバ、…なシ」

・訳し方は「~でないならば…はない」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『非~無…』(順接仮定条件)

⑴ 礼に非ざれば、行ふ無きなり (現代語訳:礼でないならば、実行することはない)

否定語を重ねる形『無~非…』

仮定の表現『無~非…』

『無~非…』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~なクンバ、…ニあらズ」

・訳し方は「~がないならば…ではない」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『無~非…』(順接仮定条件)

⑴ 是非の心無くんば、人に非(あら)ざるなる (現代語訳:是非を判断する心がないならば、人ではない)

特殊な仮定の形

副詞や接続詞、否定語を重ねて使う以外の仮定の形を紹介します。

『使』を使う仮定の形

『使』を使った仮定の表現

『使』は、基本的に使役を表しますが、前後の文脈から仮定に読む場合があります。

・読み方は「~ヲシテ、…(セ)しメバ」(「しメ」は『使役』の助動詞)

・訳し方は「もし~に…させたとしたら」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『使』(順接仮定条件)

⑴ 女(なんぢ)の狗(く)をして白にして往き黒にして来たらしめば、子(し)豈に能(よ)く怪しむこと毋からんや (現代語訳:もしお前の飼い犬白い色で出てゆき黒い色で帰ってこさせたとしたら、あなたもどうして怪しまずにいられようか、怪しまずにはいられまい)

⑵ 其の言をして是たらしめば、誅すべからず (現代語訳:もしその言葉が正しいとしたら、殺すことはできない)

『徴』を使う仮定の形

『徴』を使った仮定の表現

『徴』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「~なカリセバ」

・訳し方は「もし~がなかったならば」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『徴』(順接仮定条件)

⑴ 管仲徴(な)かりせば、吾(われ)其れ髪を被(かうむ)り衽(えり)を左にせん (現代語訳:もし管仲がいなかったならば、我々は髪を乱し着物の襟を左前にしているだろう(野蛮な文化の中にいることだろう))

『今』を使う仮定の形

『今』を使った仮定の表現

『今』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「いま~(セ)バ」

・訳し方は「今もし~ならば」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『今』(順接仮定条件)

⑴ 王(わう)必ず士を致さんと欲せ、先づ隗(くわい)より始めよ (現代語訳:今もし王様がぜひ立派な人物を呼び寄せたいとお考えならば、まずこの隗からお始めください)

『不者』を使う仮定の形

『不者』を使った仮定の表現

『不者』は、順接仮定条件を表します。

・読み方は「しからずンバ」

・訳し方は「もしそうでないならば」

となります。

例文を確認してみましょう。

例文 『不者』(順接仮定条件)

⑴ 沛公を坐に撃ちて之を殺せ。不者(しからず)んば、若(なんぢ)が属皆且(まさ)に虜(とりこ)とする所と為らんとす (現代語訳:沛公をその場で斬り殺せ。もしそうでないならば、お前ら一族はすべて沛公の捕虜にされてしまうであろう)

まとめ

漢文の仮定の表現についてまとめます。

順接仮定条件について

順接仮定条件(標準)

日本語(現代語)では、順接仮定条件は「もし~ならば」と表現します。

漢文では、順接仮定条件を表わす語『若(も)し』『如(も)し』『苟(いやし)くも』『則(すなは)ち』を用います。

順接仮定条件(二重否定の形)

否定を二つ重ねて順接仮定条件を表わす形には『不~不…』『非~不…』『無~不…』『不~無…』『非~無…』『無~非…』があります。

順接仮定条件(特殊)

・特殊な順接仮定条件、「もし~に…させたとしたら」は漢文で『使(し)めば』を用います。

・特殊な順接仮定条件、「もし~がなかったならば」は漢文で『徴(な)かりせば』を用います。

・特殊な順接仮定条件、「今もし~ならば」は漢文で『今(いま)』を用います。

・特殊な順接仮定条件、「もしそうでないならば」は漢文で『不者(しから)んば』を用います。

逆接仮定条件について

逆接仮定条件

日本語(現代語)では、逆接仮定条件は「たとえ~としても」と表現します。

漢文では、逆接仮定条件を表す語『若(も)し』『如(も)し』『苟(いやし)くも』『縦(たと)ひ』『雖(いへど)も』を用います。

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