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接続助詞とは
助詞は、その代表的なものに「てにをは」があり、その機能は、他の語との関係を示したり、語に一定の意味を添えたりします。
接続助詞は、助詞の種類のひとつであり、前の語句を後ろの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係を示す働きがあります。
古文の接続助詞の代表的なものには、「ば・と・とも・ど・ども・が・に・を・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」があります。
今回は、接続助詞の「が」「に」「を」について解説します。
接続助詞「が」「に」「を」の接続
接続助詞の「が」「に」「を」はいずれも活用語(動詞や助動詞、形容詞、形容動詞)の連体形に接続します。
次に、接続助詞「が」「に」「を」の用法を学びましょう。
接続助詞「が」「に」「を」の用法
接続助詞「が」「に」「を」には、『単純接続』と『逆接確定条件』の用法があります。
さらに、接続助詞「に」「を」には『順接確定条件』の用法があります。
接続助詞「が」の用法
接続助詞「が」には、『単純接続』と『逆接確定条件』の2つの用法があります。
接続助詞「が」の『単純接続』用法
単純接続とは、前の事柄にあとの事柄が順に続くことを示します。
現代語訳はそのまま「~が」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 落ち入りける時、巳(み)の時ばかりなりけるが、日もやうやく暮れぬ 〔今昔物語集〕
(現代語訳:(海に)落ちこんだときは、午前十時ごろであったが、日もしだいに暮れてしまった)
接続助詞「が」の『逆接確定条件』用法
逆接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から逆接(予期される結果が現れないことについて)の話を進める表現です。
『あるひとつの事実から、予想と反するこたえが導き出されることについて述べたい場面』に使われる表現です。
文章の中では、接続助詞の「て」の直前に位置する内容が、事実に相当する部分になり、接続助詞「て」の直後に位置する内容が、予想に反する結果を表す部分になります。
現代語訳は「~が」「~けれども」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ めでたくは書きて候ふが、難少々候ふ 〔古今著聞集〕
(現代語訳:りっぱには書いてございますが、欠点が少しございます)
接続助詞「に」の用法
接続助詞「に」には、『単純接続』『逆接確定条件』『順接確定条件』の3つの用法があります。
接続助詞「に」の『単純接続』用法
単純接続とは、前の事柄にあとの事柄が順に続くことを示します。
現代語訳はそのまま「~と」「~ところ」「~が」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 寝たるよしにて、出(い)でくるを待ちけるに、すでにし出だしたるさまにて 〔宇治拾遺物語〕
(現代語訳:(児(ちご)が)寝たふりをして、(ぼた餅が)できてくるのを待っていたところ、いよいよ作り上げたようすで)
接続助詞「に」の『逆接確定条件』用法
逆接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から逆接(予期される結果が現れないことについて)の話を進める表現です。
現代語訳は「~のに」「~けれども」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 女も、並々ならず、かたはらいたしと思ふに、御消息(せうそこ)も絶えてなし 〔源氏物語〕
(現代語訳:女も、ひとかたならず、気の毒だと思うけれども、(その後、光源氏からの)お手紙もまったくない)
接続助詞「に」の『順接確定条件』用法
順接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から順接(予期される結果が現れることについて)の話を進める表現です。
現代語訳は「~ので」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ このこと嘆くに、ひげも白く、腰もかがまり 〔竹取物語〕
(現代語訳:このことを嘆くので、ひげも白くなり、腰も曲がって)
接続助詞「を」の用法
接続助詞「を」には、『単純接続』『逆接確定条件』『順接確定条件』の3つの用法があります。
接続助詞「を」の『単純接続』用法
単純接続とは、前の事柄にあとの事柄が順に続くことを示します。
現代語訳はそのまま「~と」「~ところ」「~が」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 垣(かき)のくづれより通ひけるを、度(たび)重なりければ 〔古今和歌集〕
(現代語訳:(土塀の)垣のくずれた所を通って通(かよ)っていたが、たび重なったので)
接続助詞「を」の『逆接確定条件』用法
逆接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から逆接(予期される結果が現れないことについて)の話を進める表現です。
現代語訳は「~のに」「~けれども」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ まかでなむとし給ふを、暇(いとま)さらに許させ給はず 〔源氏物語〕
(現代語訳:(桐壺の更衣は)退出してしまおうとしなさるけれども、(桐壺帝は)休暇をまったくご許可なされない)
接続助詞「を」の『順接確定条件』用法
順接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から順接(予期される結果が現れることについて)の話を進める表現です。
現代語訳は「~ので」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 君により言(こと)の繁(しげ)きを古郷(ふるさと)の明日香(あすか)の川に潔身(みそぎ)しにゆく 〔万葉集〕
(現代語訳:あなた様のことで世間の噂がうるさいので、その穢れを落としに、故郷の明日香川に禊ぎをしに参ります)
どの接続(用法)になるかは文脈で判断する
接続助詞の「が」「に」「を」が、『単純接続』『逆接確定条件』『順接確定条件』のどの用法で使われているかどうか見分けるには、前後の内容から判断するしかありません。
前の部分に対し、後の部分が順当な結果である、または前の部分が後ろの部分の原因や理由の説明になっている場合は『順接確定条件』であり、前の部分に対し、後の部分が対立する結果なら『逆接確定条件』となります。
前の事柄にあとの事柄が単に順に続いている場合には、『単純接続』となります。
それでは、接続助詞の「に」を例にして、それぞれの用法の違いを見てみましょう。
⑴ 十月つごもりなるに、紅葉(もみぢ)散らで盛りなり 〔更級日記〕
(現代語訳:十月(陰暦)の末であるのに、紅葉が散らないで盛りである)
⑵ 涙のこぼるるに、目も見えず、物も言はれず 〔伊勢物語〕
(現代語訳:涙がこぼれるので、目も見えず、物も言うことができない)
⑶ かぐや姫、あやしがりて見るに、鉢の中に文あり 〔竹取物語〕
(現代語訳:かぐや姫が、不思議に思って見ると、鉢の中に手紙がある)
例文⑴が『逆接確定条件』、例文⑵が『順接確定条件』、例文⑶が『単純接続』となります。
前の部分と後ろの部分のつながりが自然になるような訳を当てはめて、どの用法が用いられているか見極めましょう!
まとめ
今回学んだことをまとめます。
・接続助詞「が」の2つの用法は『単純接続』『逆接確定条件』である。
・接続助詞「が」は連体形に接続する。
・『単純接続』 現代語訳:~が
・『逆接確定条件』 現代語訳:~が、~けれども
・接続助詞「に」の3つの用法は『単純接続』『逆接確定条件』『順接確定条件』である。
・接続助詞「に」は連体形に接続する。
・『単純接続』 現代語訳:~と、~ところ、~が
・『逆接確定条件』 現代語訳:~のに、~けれども
・『順接確定条件』 現代語訳:~ので
・接続助詞「を」の2つの用法は『単純接続』『逆接確定条件』『順接確定条件』である。
・接続助詞「を」は連体形に接続する。
・『単純接続』 現代語訳:~と、~ところ、~が
・『逆接確定条件』 現代語訳:~のに、~けれども
・『順接確定条件』 現代語訳:~ので