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接続助詞とは
助詞は、その代表的なものに「てにをは」があり、その機能は、他の語との関係を示したり、語に一定の意味を添えたりします。
接続助詞は、助詞の種類のひとつであり、前の語句を後ろの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係を示す働きがあります。
古文の接続助詞の代表的なものには、「ば・と・とも・ど・ども・が・に・を・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」があります。
今回は、接続助詞の「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」について解説します。
接続助詞の「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の成り立ち
接続助詞「ものの」は、形式名詞「もの」に格助詞「の」が付いた「ものの」が一語化したものです。
接続助詞「ものを」は、形式名詞「もの」に間投助詞「を」が付いた「ものを」が一語化したものです。
接続助詞「ものから」は、形式名詞「もの」に格助詞「から」が付いた「ものから」が一語化したものです。
接続助詞「ものゆゑ」は、形式名詞「もの」に形式名詞「ゆゑ」が付いた「ものゆゑ」が一語化したものです。
接続助詞「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」 用法と接続
接続助詞の「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」は活用語(動詞や助動詞、形容詞、形容動詞)の連体形に接続します。
接続助詞の「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」には『逆接確定条件』という共通の用法があります。
逆接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から逆接(予期される結果が現れないことについて)の話を進める表現です。
『あるひとつの事実から、予想と反するこたえが導き出されることについて述べたい場面』に使われる表現です。
文章の中では、接続助詞の「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の直前に位置する内容が、事実に相当する部分になり、接続助詞「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の直後に位置する内容が、予想に反する結果を表す部分になります。
さらに「ものを」「ものから」「ものゆゑ」には、『逆接確定条件』に加えて『順接確定条件』の用法があります。
順接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から順接(予期される結果が現れることについて)の話を進める表現です。
『あるひとつの事実から、予想される(順当な)こたえが導き出されることについて述べたい場面』に使われる表現です。
文章の中では、接続助詞の「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の直前に位置する内容が、事実に相当する部分になり、接続助詞「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の直後に位置する内容が、予想される(順当な)結果を表す部分になります。
接続助詞「ものの」の用法
接続助詞「ものの」の用法は『逆接確定条件』です。
『逆接確定条件』は、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から予期される結果が現れないことを表します。
現代語訳は「~けれども」「~のに」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ つれなくねたきものの忘れ難(がた)きにおぼす 〔源氏物語〕
(現代語訳:冷淡で恨めしいけれども、忘れがたい人とお思いになる)
⑵ 冬の夜の澄める月に、雪の光りあひたる空こそ、あやしう色なきものの身にしみて 〔源氏物語〕
(現代語訳:冬の夜の澄んでいる月(の光)に、雪が光って映え合っている空は、不思議とはなやいだ色はないけれども身にしみて)
現代語の接続助詞「ものの」
現代語の接続助詞「ものの」は古語の接続助詞「ものの」と同じような意味を持ちます。
例えば、「道具を買うには買ったものの、使い方がわからない」というように使われ、ある事実をもとにして導かれる事柄や内容が順当な結果にならないような場面で使われます。
接続助詞「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の用法
接続助詞「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の用法は『逆接確定条件』『順接仮確定条件』の2つがあります。
『逆接確定条件』は、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から予期される結果が現れないことを表します。
現代語訳は「~けれども」「~のに」となります。
『順接確定条件』は、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から予想される結果が導かれることを表します。
現代語訳は「~ので」「~だから」となります。
接続助詞「ものを」「ものから」「ものゆゑ」は、「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の直後に置かれる事実から導かれる結果を表わしている部分が、予想されない結果であれば『逆接確定条件』、予想される結果であれば『順接仮確定条件』の用法が使われていると判断できます。
例文で確認してみましょう。
⑴ 都出(い)でて君にあはむと来(こ)しものを来(こ)しかひもなく別れぬるかな 〔土佐日記〕
(現代語訳:都を出て、あなたに会おうとやって来たのに、来たかいもなく、(あっけなく)別れてしまうことよ)
⑵ 日がな一日(いちんち)ゐたり立ったりするものを、腹もへらうぢゃあねえか 〔浮世風呂〕
(現代語訳:朝から晩まですわったり立ったりするのだから、腹も減ろうというものさ)
例文⑴が『逆接確定条件』の用法で、例文⑵が『順接確定条件』の用法となります。
⑴ 月は有り明けにて、光をさまれるものから、影さやかに見えて 〔源氏物語〕
(現代語訳:月は有り明けの月で、光は薄らいでいるけれども、月の形ははっきりと見えて)
⑵ さすがに辺土の遺風忘れざるものから、殊勝に覚えらる 〔おくのほそ道〕
(現代語訳:やはり片田舎に残っている風流を忘れずに伝えているから、感心なことだと思われる)
例文⑴が『逆接確定条件』の用法で、例文⑵が『順接確定条件』の用法となります。
⑴ 誰(た)が秋にあらぬものゆゑをみなへしなぞ色に出(い)でてまだき移ろふ 〔古今和歌集〕
(現代語訳:だれかの秋では(なく、おみなえし(=植物の名)だけが特に飽きられたわけでも)ないのに、おみなえしよ、どうして目立って、早くも色あせるのか)
⑵ ことゆかぬものゆゑ、大納言をそしりあひたり 〔竹取物語〕
(現代語訳:(家来たちは)わけのわからないことなので、大納言を非難しあっている)
例文⑴が『逆接確定条件』の用法で、例文⑵が『順接確定条件』の用法となります。
まとめ
接続助詞の「ものの」「ものを」「ものから」「ものゆゑ」は活用語の連体形に接続する。
接続助詞「ものの」の用法は『逆接確定条件』の1つであり、接続助詞「ものを」「ものから」「ものゆゑ」の用法は『逆接確定条件』と『順接確定条件』の2つがある。
『逆接確定条件』と『順接確定条件』の現代語訳は次の通りとなる。
用法:『逆接確定条件』 現代語訳:~けれども・~のに
用法:『順接確定条件』 現代語訳:~ので・~だから