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接続助詞とは
助詞は、その代表的なものに「てにをは」があり、その機能は、他の語との関係を示したり、語に一定の意味を添えたりします。
接続助詞は、助詞の種類のひとつであり、前の語句を後ろの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係を示す働きがあります。
古文の接続助詞の代表的なものには、「ば・と・とも・ど・ども・が・に・を・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」があります。
今回は、接続助詞の「ど」「ども」について解説します。
接続助詞「ど」「ども」の現代語訳 用法 接続
古文で用いられる接続助詞の「ど」「ども」の現代語訳は2つあります。
1.「〜けれども」(逆接確定条件)
2.「〜であっても(やはり)」(逆接恒常条件)
接続助詞の「ども」を訳す際は、これら2つの現代語訳をまずは当てはめてみて、その訳した内容が自分自身にとって違和感がなければ、その訳を正しいものと判断して選択すると良いでしょう。
接続助詞「ど」「ども」は已然形接続です。つまり、接続助詞「ど」「ども」が活用語(動詞や助動詞、形容詞、形容動詞)の後に続けて用いられる場合、その前に置かれる活用語は已然形になります。
接続助詞「ど」「ども」は、あるひとつの事実を前提にした条件をつくるため、已然形(=已(すで)にそうなっているという状況に対して用いられる形)に接続します。
「ども」は接続助詞「ど」に係助詞「も」が付いて一語化したもので、「ど」と「ども」は同じ意味で使われます。
1.「けれども〜」(逆接確定条件)について解説
接続助詞の「ど」「ども」は現代語の「〜けれども」に相当し、『〜けれども、…である』と表現したい場面で用いられます。この「ど」「ども」は接続助詞なので、語句と語句をつなぐ働きを持ちます。
逆接確定条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から逆接(予期される結果が現れないこと)の話を進める表現です。また、文章の中で、接続助詞の「ど」「ども」の直前に位置する内容が、事実に相当する部分になり、接続助詞「ど」「ども」の直後に位置する内容が、予想に反する結果を表す部分になります。
古文(物語や和歌等)の作者はどのような場面や心境の際にこの逆接確定条件の接続助詞「ど」「ども」を使ったのでしょうか。
これまでの解説をふまえてその場面・心境を考えてみると、
『あるひとつの事実から、予想と反するこたえが導き出されることについて述べたい場面』になります。
それでは、例文を確認して理解を深めましょう。
⑴ 翁(おきな)、嫗(おうな)、血の涙を流してまどへど、かひなし 〔竹取物語〕
(現代語訳:翁と嫗とは、血の涙を流して思い乱れるけれども、むだだ)
⑵ 「この戸をあけたまへ」とたたきけれど、あけで、歌をなむよみていだしたりける 〔伊勢物語〕
(現代語訳:「この戸を開けてください」と叩いたけれども、(戸を)開けずに、歌を詠んで差し出したのだった)
⑴ 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる 〔古今和歌集〕
(現代語訳:秋が来たと目にははっきりと見えないけれども風の音で”はっと”気づいたことだ)
⑵ 足ずりをして泣けどもかひなし 〔伊勢物語〕
(現代語訳:足をばたつかせて泣くけれどもどうにもならない)
2.「〜であっても(やはり/いつも)」(逆接恒常条件)について解説
接続助詞の「ど」「ども」は現代語の「〜であっても(やはり/いつも)」に相当し、『〜であっても(やはり/いつも)、…である』と表現したい場面で用いられます。この「ど」「ども」は接続助詞なので、語句と語句をつなぐ働きを持ちます。
逆接恒常条件とは、自分の目の前にある事実を受けて、その事実から必ず逆接(予期される結果が現れないこと)が起こることを表し、その必ず起こる逆接を強調する時に用いられます。文章の中で、接続助詞の「ど」「ども」の直前に位置する内容が、事実に相当する部分になり、接続助詞「ど」「ども」の直後に位置する内容が、予想に反する結果を表す部分になります。
古文(物語や和歌等)の作者はどのような場面や心境の際にこの逆接恒常条件の接続助詞「ど」「ども」を使ったのでしょうか。
これまでの解説をふまえてその場面・心境を考えてみると、
『あるひとつの事実から、必ず予想と反する結果になることを述べたい場面』になります。
逆接恒常条件の接続助詞「ど」「ども」は「たとひ」「いかに」「いかなる」という語とともに用いられることが多いです。
それでは、例文を確認して理解を深めましょう。
⑴ その子、孫(うまご)までは、はふれにたれど、なほなまめかし 〔徒然草〕
(現代語訳:その(ような人たちの)子供や孫までは、たとえ落ちぶれてしまっていても、やはり上品である)
⑵ 睦(むつ)ましき人なれど、男子(をのこ)にはうちとくまじきものなり 〔源氏物語〕
(現代語訳:親しい間柄の人であっても、やはり男の子にはうちとけてはならないものだ)
⑴ いかなる大事あれども、人の言ふこと聞き入れず 〔徒然草〕
(現代語訳:どのような大切なことがあってもいつも人の言うことを聞き入れない)
接続助詞「ど」「ども」はいつの時代に使われたか
「ど」は上代から使われていたとされ、平安時代の和文などに多く用いられているようです。
現代語においても「暑いといえど、我慢できないことはない」のように今でも使われていることが確認できます。
「ども」は奈良時代には祝詞や宣命、漢文訓読文に、平安時代には漢文訓読文や和漢混合文などに用いられたようです。一方で女流文学作品などにはあまり見られないようです。
現代語でも「名人といえども失敗することもある」や「声はすれども姿は見えず」といったように使われていることが確認できます。
まとめ
古文で用いられる接続助詞の「ど」「ども」の現代語訳は2つ。
1.「〜けれども」(逆接確定条件)
2.「〜であっても(やはり)」(逆接恒常条件)
古文で用いられる接続助詞「ど」「ども」は已然形に接続する。