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副助詞とは
助詞は、その代表的なものに「てにをは」があり、その機能は、他の語との関係を示したり、語に一定の意味を添えたりします。
副助詞は助詞の種類のひとつであり、副助詞の<副>は「添える」という意味を持ち、種々の語に付いて、いろいろな意味を添える働きがあります。
古文の副助詞の代表的なものには、「だに・すら・さへ・のみ・ばかり・まで・など・し」があります。
今回は、接続助詞の「だに」「すら」「さへ」「のみ」について解説します。
副助詞「だに」「すら」「さへ」「のみ」の用法
副助詞「だに」には『最低限の希望』『類推』の2つの用法があります。
副助詞「すら」には『類推』『強調』の2つの用法があります。
副助詞「さへ」には『添加』『類推』の2つの用法があります。
副助詞「のみ」には『限定』『強調』の2つの用法があります。
副助詞「だに」の用法
副助詞「だに」の『最低限の希望』用法
『最低限の希望』は、最低限の一事をあげて強調して希望する言い方です。
現代語訳は「せめて~だけでも」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 散りぬとも香(か)をだに残せ梅の花恋しき時の思ひ出(い)でにせむ 〔古今和歌集〕
(現代語訳:散ってしまっても、せめて香りだけでも残してくれ、梅の花よ。恋しくてたまらないときのよすがにするから)
副助詞「だに」の『類推』用法
『類推』は、軽いものをあげて、他にもっと重いものがあることを類推させる言い方です。
現代語訳は「~さえ」「~さえも」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 蛍ばかりの光だになし 〔竹取物語〕
(現代語訳:蛍ほどの光さえない)
副助詞「すら」の用法
副助詞「すら」の『類推』用法
『類推』は、軽いものをあげて、他にもっと重いものがあることを類推させる言い方です。
現代語訳は「~さえ」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 聖(ひじり)などすら、前(さき)の世のこと夢に見るは、いと難(かた)かなるを 〔更級日記〕
(現代語訳:高徳の僧などさえ、前世のことを夢に見るのは、たいそうむずかしいとかいうことなのに)
副助詞「すら」の『強調』用法
『強調』は、ある一事を特に強調する言い方です。
現代語訳は「~までも」「~でさえも」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 大空ゆ通ふわれすら汝(な)がゆゑに天(あま)の河路(かはぢ)をなづみてそ来(こ)し 〔万葉集〕
(現代語訳:大空を(自由に)行き通う私(=彦星)でさえも、あなた(=織女星)のために天の川の道を難渋してやってきたのだ)
副助詞「さへ」の用法
副助詞「さへ」の『添加』用法
『添加』は、ある状態に、さらに他の状況が加わることを表す言い方です。
現代語訳は「(その上)~までも」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 一昨日(をとつひ)も昨日(きのふ)も今日(けふ)も見つれども明日(あす)さへ見まく欲(ほ)しき君かも 〔万葉集〕
(現代語訳:一昨日も昨日も今日も会ったけれども、そのうえ明日までも会いたいあなただなあ)
副助詞「さへ」の『類推』用法
『類推』は、軽いものをあげて、他にもっと重いものがあることを類推させる言い方です。
現代語訳は「~さえ」「~でも」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ まさしき兄弟さへ似たるは少なし。まして、従兄弟(いとこ)に似たるものはなし 〔曽我物語〕
(現代語訳:ほんとうの兄弟でも似ているのは少ない。まして、従兄弟で似ているものはない)
副助詞「のみ」の用法
副助詞「のみ」の『限定』用法
『限定』は、あるひとつのものに限定する言い方です。
現代語訳は「~だけ」「~ばかり」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 夜鳴くもの、なにもなにもめでたし。ちごどものみぞさしもなき 〔枕草子〕
(現代語訳:夜なくものは、どれもこれもすばらしい。幼児たちだけはそうでもない)
副助詞「のみ」の『強調』用法
『強調』は、軽いものをあげて、他にもっと重いものがあることを類推させる言い方です。
現代語訳は「特に」「とりわけて」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 月・花はさらなり、風のみこそ、人に心はつくめれ 〔徒然草〕
(現代語訳:月や花は言うまでもないが、風はとりわけ、人に気をもませる)
まとめ
今回学んだことをまとめます。
・接続助詞「だに」の2つの用法は『最低限の希望』『類推』である。
・『最低限の希望』 現代語訳:せめて~だけでも
・『類推』 現代語訳:~さえ、~さえも
・接続助詞「すら」の2つの用法は『類推』『強調』である。
・『類推』 現代語訳:~さえ
・『強調』 現代語訳:~までも、~でさえも
・接続助詞「さへ」の2つの用法は『添加』『類推』である。
・『添加』 現代語訳:(その上)~までも
・『類推』 現代語訳:~さえ、~でも
・接続助詞「のみ」の2つの用法は『限定』『強調』である。
・『限定』 現代語訳:~だけ、~ばかり
・『強調』 現代語訳:特に、とりわけて