漢文の受身の形と使役の形について説明します。
まず受身の形について説明します。
受身の助動詞『見』『被』
受身の助動詞『見』『被』を使った受身の形を紹介します。
受身の助動詞『見』『被』
・読み方は「~る」「~(セ)らル」(「る」「らル」は『受身』の助動詞)
・訳し方は「~れる」「~られる」
となります。
動作の動作主は、前置詞の『於(于・乎)』を前に置いて「於 + 動作主」という形で表します。
また、助動詞『見』『被』を省略して、前置詞だけで受身を表現することもあります。
例文を確認してみましょう。
⑴ 信にして疑はれ、忠にして謗らる (現代語訳:正直であるのに疑われ、誠実であるのに非難される)
⑵ 責めらる (現代語訳:責められる)
⑶ 上(かみ)に忌(い)まる (現代語訳:上役に疎まれる)
⑷ 祇だ奴隷人の手に辱しめられ、 (現代語訳:ただ使用人の手によってはずかしめられ、)
『為』を用いた受身の表現
『為』を用いた受身の表現もあります。
受身の表現『為~所…』
・読み方は「~ノ…(スル)ところトなル」
・訳し方は「~に…される」
となります。例文を確認してみましょう。
⑴ 人の愛する所と為る (現代語訳:人に愛される)
⑵ 妻の鄙(いや)しむ所と為る (現代語訳:妻に軽蔑される)
⑶ 後るれば則ち人の制する所と為る (現代語訳:遅れをとると相手に制圧される)
使役の助動詞『使』『令』
使役の助動詞『使』『令』を使った受身の形を紹介します。
使役の助動詞『使』『令』
・読み方は「~ヲシテ…セしム」(「しム」は『使役』の助動詞)
・訳し方は「~に…させる」
となります。
ちなみに、使役の助動詞には『使』『令』の他に「教」「遣」「俾」がありますが、問われることは稀です。
例文を確認してみましょう。
⑴ 人をして愁へしむ (現代語訳:人を感傷的にする)
⑵ 子吾をして去らしむ (現代語訳:君は私を帰らせる)
⑶ 去らしめず (現代語訳:帰さない)
⑷ 女(むすめ)をして父に問はしむ (現代語訳:娘から父に問わせた)
⑸ 公をして馬を以て人を殺さしむ (現代語訳:王様に馬のことが理由で人を殺させる)
使役の意味を含む動詞を使って使役を表す場合は次のようになります。
使役の意味を含む動詞『命』
・読み方は「~にめいジテ…セシム」(「シム」は『使役』の助動詞)
・訳し方は「~に命令して…させる」
となります。
使役の意味を含む動詞には『命(めいジテ)』の他に『勧(すすメテ)』『召(めシテ)』『遣(つかはシテ)』『令(れいシテ)』『教(おしエテ)』『率(ひきヰテ)』『戒(いましメテ)』『諭(さとシテ)』などがあります。
例文を確認してみましょう。
⑴ 聊(いささ)か故人に命じて之を書せしめ、以つて歓笑を為すのみ (現代語訳:ともかく親友に頼んでこの詩句を書かせ、お笑い草にするだけだ)
最後に
今回は、漢文の受身や使役の形について解説しました。