目次
終助詞とは
助詞は、その代表的なものに「てにをは」があり、その機能は、他の語との関係を示したり、語に一定の意味を添えたりします。
終助詞は、助詞の種類のひとつであり、文の終わりに付いて、その文に一定の意味を添える働きがあります。
古文の終助詞の代表的なものには、「ばや・しか・てしか(てしが)・てしかな(てしがな)・にしか(にしが)・にしかな(にしがな)・なむ(なん)・もが・もがな・がな・な・そ・か・かな・かし」があります。
今回は、終助詞の「な」「そ」について解説します。
まず、「な」について解説します。
終助詞「な」の用法と接続
終助詞「な」はその用法や接続から3つの種類に分けることができます。
終助詞「な」には『詠嘆・念押し』を表すもの、『意志・希望・勧誘・願望・期待』を表すもの、『強い意志を』を表すものがあります。
終助詞「な」の接続
終助詞「な」には『詠嘆・念押し』を表すもの、『意志・希望・勧誘・願望・期待』を表すもの、『強い禁止』を表すものがあります。
『詠嘆・念押し』を表す終助詞「な」は活用語(動詞や助動詞、形容詞、形容動詞)の終止形・命令形に接続します。(他に『引用』の格助詞「と」などに接続します)
『意志・希望・勧誘・願望・期待』の終助詞「な」は動詞や助動詞の未然形に接続します。
未然形は「未だ然らざる(=まだそうなっていない)」を表わし、まだ実現していない将来のことや未確定のことを述べるときに使われます。未然形に接続する終助詞の「な」はまだ実現していない将来のことや未確定の事を述べる『意志・希望・勧誘・願望・期待』の用法となります。
『強い禁止』の終助詞「な」は動詞や助動詞の終止形(ラ変型には連体形)に接続します。
最初に『詠嘆・念押し』の終助詞「な」について説明します。
『詠嘆・念押し』の終助詞「な」
終助詞「な」の『詠嘆』用法
『詠嘆』は、深く心に感じたことを表現する言い方です。
現代語訳は「~だなあ」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせし間(ま)に 〔古今和歌集〕
(現代語訳:花の色は、すっかり色あせてしまったことだなあ。むなしく日を過ごし、長雨が降り続いていた間に)
終助詞「な」の直前の「けり」は助動詞「けり」の終止形です。
終助詞「な」の『念押し』用法
『念押し』は、重ねて注意する、何度も確かめる言い方です。
現代語訳は「~ね」「~ぞ」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ あべの大臣、火ねずみの皮衣もていまして、かぐや姫にすみ給ふとな 〔竹取物語〕
(現代語訳:あべの大臣は、火ねずみの皮衣をもっておいでになって、かぐや姫に夫として通っていらっしゃるというのだね)
終助詞「な」の直前の「と」は『引用』の格助詞の「と」です。
次に『意志・希望・勧誘・願望・期待』の終助詞「な」について説明します。
『意志・希望・勧誘・願望・期待』の終助詞「な」
終助詞「な」の『意志・希望』用法
『意志』は、話し手のある事を実現させようとする意向を表わす言い方です。
『希望』は、ある動作・作用が実現することを願い望む意を表す言い方です。
現代語訳は「~よう」「~たい」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 今しらす久邇(くに)の都に妹(いも)に逢(あ)はず久しくなりぬ行きてはや見な 〔万葉集〕
(現代語訳:新たに天皇がお治めになっている久邇の都に(いるので)、妻に逢わない期間が長くなってしまった。(妻の所に)行って早く逢いたい)
終助詞「な」の直前の「見」はマ行上二段動詞「見る」の未然形です。
終助詞「な」の『勧誘』用法
『勧誘』は、相手に勧めて誘う言い方です。
現代語訳は「~しようよ」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮(しほ)もかなひぬ 今は漕ぎ出(い)でな 〔万葉集〕
(現代語訳:熟田津で、船出をしようとして月の出を待っていると、潮流もいい具合になった。さあ、漕ぎ出そう)
終助詞「な」の直前の「出(い)で」はダ行下二段動詞「出(い)づ」の未然形です。
終助詞「な」の『願望・期待』用法
『願望』は、願い望むことを表現する言い方です。
『期待』は、良い結果や状態の実現を待ち望むことを表現する言い方です。
現代語訳は「~てほしい」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ もろもろ救ひ渡し給(たま)はな 〔仏足石歌〕
(現代語訳:多くの人々をお救いになって、浄土へお渡しになってほしい)
終助詞「な」の直前の「給は」は補助動詞「給ふ」の未然形です。
次に『強い禁止』の終助詞「な」について説明します。
『強い禁止』の終助詞「な」
『強い禁止』は、してはいけないと強く命じる言い方です。
現代語訳は「~(する)な」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 竜(たつ)の頸(くび)の玉取り得ずは、帰り来(く)な 〔竹取物語〕
(現代語訳:竜の首の玉をとることができないならば、帰って来るな)
終助詞「な」の直前の「来(く)」はカ変動詞「来(く)」の終止形です。
次に、「そ」について説明します。
終助詞「そ」の用法と接続
終助詞「そ」は『禁止』を表します。
『禁止』を表す終助詞「そ」は副詞の「な」とセットで「な…そ」というカタチで使われることが多いです。
終助詞「そ」は動詞や助動詞の連用形(カ変・サ変には未然形)に接続します。
終助詞「そ」の『禁止』用法
『禁止』は、してはいけないと命じる言い方です。
現代語訳は「~な」「~しないでくれ」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 物知らぬことなのたまひそ 〔竹取物語〕
(現代語訳:物の道理をわきまえないことをおっしゃらないでください)
⑵ 人ないたくわびさせ奉らせ給ひそ 〔竹取物語〕
(現代語訳:あの方をひどくお困らせ申しあげなさるな)
⑶ 何事なりとも隠しそ 〔竹取物語〕
(現代語訳:どんなことでも隠さないでくれ)
まとめ
今回学んだことをまとめます。
<接続> 活用語(動詞や助動詞、形容詞、形容動詞)の終止形・命令形に接続する。
<用法>
・『詠嘆』 現代語訳:~だなあ
・『念押し』 現代語訳:~ね、~ぞ
<接続> 動詞や助動詞の未然形に接続する。
<用法>
・『意志・希望』 現代語訳:~よう、~たい
・『勧誘』 現代語訳:~しようよ
・『願望・期待』 現代語訳:~てほしい
<接続> 動詞や助動詞の終止形(ラ変型には連体形)に接続する。
<用法>
・『強い禁止』 現代語訳:~(する)な
<接続> 動詞や助動詞の連用形(カ変・サ変には未然形)に接続する。
<用法>
・『禁止』 現代語訳:~な、~しないでくれ