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接続助詞とは
助詞は、その代表的なものに「てにをは」があり、その機能は、他の語との関係を示したり、語に一定の意味を添えたりします。
接続助詞は、助詞の種類のひとつであり、前の語句を後ろの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係を示す働きがあります。
古文の接続助詞の代表的なものには、「ば・と・とも・ど・ども・が・に・を・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」があります。
今回は、接続助詞の「ば」について解説します。
接続助詞「ば」について
接続助詞の「ば」は、直前にくる言葉の活用が未然形か已然形かによって、働きが変わります。
未然形 + 「ば(接続助詞)」のカタチ ⇒ 順接仮定条件
直前の語の活用が未然形(=未だそうなっていないという状況に対して用いられる形)の場合、接続助詞の「ば」は『順接仮定条件』の意味を示します。
『順接仮定条件』とは、仮に想定した条件に対して、予想される結果(順当な結果)を導く表現です。文章の中で、接続助詞の「ば」の直前に位置する内容が、仮に想定した部分であり、接続助詞「ば」の直後に位置する内容が、予想される結果(順当な結果)を表す部分になります。
古文(物語や和歌等)の作者はどのような場面や心境の際にこの順接仮定条件の接続助詞「ば」を使ったのでしょうか。
これまでの解説をふまえてその場面・心境を考えてみると、
『ある仮に想定した条件から、予想されるこたえが導き出されることについて述べたい場面』になります。
已然形 + 「ば(接続助詞)」のカタチ ⇒ 順接確定条件
直前の語の活用が已然形(=已(すで)にそうなっているという状況に対して用いられる形)の場合、接続助詞の「ば」は『順接確定条件』の意味を示します。
『順接確定条件』とは、ある確定した条件(ある事実)に対して、予想される結果(順当な結果)を導く表現です。文章の中で、接続助詞の「ば」の直前に位置する内容が、事実に相当する部分であり、接続助詞「ば」の直後に位置する内容が、予想される結果(順当な結果)を表す部分になります。
古文(物語や和歌等)の作者はどのような場面や心境の際にこの順接確定条件の接続助詞「ば」を使ったのでしょうか。
これまでの解説をふまえてその場面・心境を考えてみると、
『あるひとつの事実から、予想されるこたえが導き出されることについて述べたい場面』になります。
さて、「已然形 + ば」の『順接確定条件』の多くは、<~ので・~から>の意味を表しますが、詳しくは「原因・理由」「単純接続」「恒常条件」の3種類に分けることができます。
条件として原因・理由を述べる場合は「原因・理由(~ので・~から)」、ある事柄に続いて次の事柄が起こったことを表す場合には「単純接続(~と・~ところ)」、恒常条件(ある事柄が起こると必ず同じ結果になること)を表わす場合には「恒常条件(~といつも・~と必ず)」という意味になります。
順接仮定条件の用法(未然形 +「ば(接続助詞)」)
『順接仮定条件』は、仮に想定した条件に対して、予想される結果(順当な結果)を導く表現です。
現代語訳は「もし~ならば」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 月の都の人まうで来(こ)ば捕らへさせむ 〔竹取物語〕
(現代語訳:もし月の都の人がやって来たら捕らえさせよう)
⑵ 名にし負はば いざこと問(と)はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと 〔古今和歌集〕
(現代語訳:都という名を持っているのならば、さあ、たずねてみよう。都鳥よ、私の愛する人は、(都で)無事で過ごしているのか、いないのかと)
例文⑴では、接続助詞「ば」の前の動詞「来(く)」は未然形「来(こ)」になっています。
例文⑵では、接続助詞「ば」の前の動詞「負(お)ふ」は未然形「負(お)は」になっています。
順接確定条件の用法(已然形 +「ば(接続助詞)」)
『順接確定条件』は、ある確定した条件(ある事実)に対して、予想される結果(順当な結果)を導く表現です。
『順接確定条件』には、「原因・理由」「単純接続」「恒常条件」の3種類があります。
順接仮定条件(原因・理由)
「原因・理由」を表わす場合、現代語訳は「~ので」「~から」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 矢ごろ少し遠かりければ、海へ一段(いつたん)ばかり打ち入れたれども 〔平家物語〕
(現代語訳:矢を射当てるのに適当な距離が少し遠かったので、海へ一段(=訳11メートル)ほど(馬を)乗り入れたけれども)
例文では、接続助詞「ば」の前の助動詞「けり」は已然形「けれ」になっています。
順接仮定条件(単純接続)
「単純接続」を表わす場合、現代語訳は「~と」「~ところ」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 東の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ 〔万葉集〕
(現代語訳:東の野に暁の光がさし出るのが見えて、ふりかえって見ると、月は(西に)傾いている)
例文では、接続助詞「ば」の前の動詞「為(す)」は已然形「すれ」になっています。
順接仮定条件(恒常条件)
「恒常条件」を表わす場合、現代語訳は「~といつも」「~と必ず」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 疑ひながらも念仏すれば、往生す 〔徒然草〕
(現代語訳:疑いながらでも念仏を唱えると必ず、往生する)
例文では、接続助詞「ば」の前の動詞「為(す)」は已然形「すれ」になっています。
その他の用法(已然形 + ば(接続助詞)」)
<已然形 +「ば(接続助詞)」>のカタチは、これまでに説明したように『順接確定条件』を表しますが、他にも、『逆接確定条件』と『並列・対照』を表わす場合があります。
『逆接確定条件』の用法
主に『打消』の助動詞「ず」の已然形「ね」に接続助詞が付いた「…ねば」のカタチで『逆接の確定条件』をあらわします。
『逆接確定条件条件』は、ある確定した条件(ある事実)に対して、予想されない結果が現れることを表します。
現代語訳は「~のに」「~うちに」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 卯(う)の花もいまだ咲かねばほととぎす佐保の山辺(やまへ)に来鳴き響(とよ)もす 〔万葉集〕
(現代語訳:卯の花もまだ咲かないのに、ほととぎすが佐保山のあたりにやって来て鳴きたてることだ)
⑵ 天(あま)の川浅瀬しらなみたどりつつ渡りはてねば明けぞしにける 〔古今和歌集〕
(現代語訳:天の川の浅瀬がどこかわからないので、白波の立っている所を探し捜ししてやってきて、渡りきらないうちに、夜が明けてしまったことよ)
『並列・対照』の用法
『並列・対照』は、並列的・対照的に前後をつなぐ働きをします。
現代語訳は「~て、一方」となります。
例文で確認してみましょう。
⑴ 鏑(かぶら)は海へ入(い)りければ、扇は空へぞあがりける 〔平家物語〕
(現代語訳:鏑矢は海に落ち入り、一方扇は空へ舞い上がった)
例文では、接続助詞「ば」の前の助動詞「けり」は已然形「けれ」になっています。
接続助詞「ば」の解説 まとめ
今回学んだことをまとめます。
・接続助詞の「ば」は、未然形か已然形に接続し、未然形に接続するか已然形に接続するかによって、働きが変わる。
・『順接仮定条件』 現代語訳:もし~ならば
・『順接確定条件(原因・理由)』 現代語訳:~ので、から
・『順接確定条件(単純接続)』 現代語訳:~と、~ところ
・『順接確定条件(恒常条件)』 現代語訳:~といつも、~と必ず
・『逆接確定条件』 現代語訳:~のに、~うちに
・『並列・対照』 現代語訳:~て、一方